Beauty and the Beast



(ふふ。今夜も大漁です♪)
 趣味の夜釣りを満喫し、自分の船室に戻ろうと暗い船内を歩くアティ。
 彼女は晴れて恋人同士となったカイルや仲間達と、大航海の真っ最中だ。
 夜釣りの収獲は調理場の生け簀に入れてきた。明日は早速腕を振るおうとはりきる。
(おさしみ、焼き魚。お団子にしてスープ。蒸し焼きも良いかも……)
 上機嫌で、鼻歌交じりに明日のメニューを考える。
「あら……?」
 その足取りが、ふいに止まった。
 船長室に、灯りがついている。
 部屋の主がまだ起きているのだろうか。
(……こんな時間に……?)
 カイルの朝は早い。したがって夜も宴会や会議がなければ早めに就寝する。もしや灯りを消し忘れたのだろうかと、アティは船長室の扉をノックした。
「カイル? 起きてますか?」
 返事はない。
「……入りますよ」
 アティは一言断ってから、船長室へと足を踏み入れる。
「カイル?」
 中を見渡せば、酒の匂いが鼻をかすめる。
「……もう」
 カイルは、椅子に座ってぐうぐうといびきをかいていた。
 辺りにはラム酒の瓶が転がっている。一人で酒盛りをしている内に眠り込んでしまったのだろう。ままあることだった。
「風邪引きますよ?」
 アティは苦笑して、自分の上着を掛けてやる。
「……んん。……アティ……?」
 その拍子に目を覚ましたのだろう。カイルが、ゆっくりと目を開けてぼうっとした視線をアティに向ける。
「カイル、こんなところで寝てたら体痛くなっちゃいますよ? 寝台に……」
 行った方がいいです、という言葉は最後まで続かなかった。
「んぅっ!?」
 ぐいっと腕を引かれ、噛みつくように口づけられる。
「カ、イル……? ダメっ……」
 酒臭い息。とろんと熱をもった眼差し。
 完全に酔っている。
「やっ……」
 酔った勢いのまま、カイルはアティの身体を抱きすくめる。
 精一杯抵抗してみるが、海の男の力にはかなわなかった。
「んっ……んん〜っ……。……ふぁ……っ……」
 嵐のような口付けに、アティの身体から力が抜けていく。
「……アティ……」
 カイルはアティの名を呼び、その身体を己の膝の上に乗せる。
 向かい合い、カイルはアティの服の下から手を這わせた。
「ひゃぁ……っ……」
 服をずり上げられ、外気にさらされた豊満な胸を揉む。
「あっ……ああっ……ん……っ」
 そして手でだけでは飽き足りず、カイルは胸の谷間に顔を埋めた。
「っ!! んぁ……あ……っ」
 手で揉みしだきながら、アティの弱い所を熱い舌で攻め立てる。
 ピン、と勃ち上がった先端を熱い舌で絡め取られると、もうたまらない。
「〜っ!!」
 アティの体はぞくぞくっと快感に震えた。
 そしてカイルはまるで子供のように彼女の胸を吸い、かと思えばわざと歯を立てて甘噛みし、アティを翻弄した。
 彼女の泉からは、すでにとろりと熱いものが零れ始めている。
「っはぁ……はぁ……」
 抵抗する手が緩んだのがわかったのだろう。
 カイルはアティの腰を抱き、引き寄せようとする。
「やぁっ」
 力の入らない体で、それでも逃れようとするアティ。
 しかし結局、後ろから抱きしめられる形で捕まってしまった。
「やっ、ダメ……ぇ……っ」
 下着をずり下げられ、後ろから、
「っ!!」
 いきなり熱い楔が打ちつけられる。
 濡れ始めていた膣はたやすくカイルの雄を受け入れた。
 いつもとは違う、強引な抱き方。
 それに、この体勢。
 まるで獣の交わりのようで、恥ずかしく、けれどそれが余計に熱を煽る。
 金の髪を揺らし、獲物を射竦めるような眼差しでアティを抱くカイルは、まるで獅子のようだった。
「……やっ、……あ……ぁあ……っ」
「アティ、アティ……」
 切なげに自分の名を呼びながら激しく打ちつけられる腰に、アティはただただ喘ぐことしかできない。
「カイル……、んんっ……ぅ……ああっ……」
「アティ……ッ」
「んっ。んああああああっ!!」
 びくびくんっと体を震わせ、アティは絶頂を迎えた。
 後を追うように、白濁が彼女のナカに放たれる。
「〜っ……あ……」
 その感覚に、アティは再び身を震わせた。
「……っ、カイルの……ばか……ぁ……」


 アティのナカで果てた後、カイルは満足したのか脱力したのか、そのまままた眠りこけた。
 そして次に目覚めた時、顔を真っ赤にして眉を吊り上げているアティにお説教をくらう羽目になったのである。



  おまけ『アティのお説教』


「カイル」
「お、おう」
「そこに座ってください。
 眉を吊り上げたまま、アティは厳しい声音でそう言った。
 とりあえず逆らわない方が良いと、カイルは素直に従う。
「まず、これは何ですか」
 アティが持ち上げたのは、空の瓶。
「ラム酒の瓶」
「そうです。カイル、貴方お酒には強い方でしたっけ?」
「いや、結構弱い。すぐ寝ちまうしなあ」
 でも好きなんだよなあ、と悪びれないカイルに、アティはぴくっと眉を動かす。
 しかしカイルは気付かず、『ラム酒は海賊の嗜みだ』とよくわからない講釈を語り出した。
「カイル!」
「うおっ」
「海賊の嗜みでもなんでも、カイルはもう二度とラム酒なんか飲んじゃダメです!」
「なんでだ?」
「なっ、なんでって……」
 アティはかあああっと赤面する。
「とっ、とにかくダメです!!」
 まさか『獣のように自分に襲いかかってくるから』とも言えず、アティはそう叫んだ。
 半ばヤケだった。
「ん〜、もしかして、抑えが利かなくなるからか?」
 しかしカイルはしれっと、そう言ってのける。
「なっ、まさか覚えて……」
 昨夜の情事。てっきり記憶にはないと思っていたのに。
 というか、意識があってのこのふるまいだったのか。
「忘れられるわけねえよ。お前、すげえ可愛かったし。まあ、酔ってたってのもあるけどよ、あんまり可愛くてエロいから、ついつい止まらなくなったというか……」
「なっなななな……。可愛っ……エ、エロ……っ」
 アティは耳まで真っ赤になり、わなわなと震える。
 けれどカイルは悦に入ったまま、気付かない。
「たまには後ろからってのもアリだなあ〜。すげえ気持ちよかった…って、あれ? アティ?」
「カイルの……」
 その手に握られているのは、『果てしなき蒼【ウィスタリアス】』。
「ア、 アティ? そのっ、俺が悪かった! すまん!! 謝る!! だから……っ」
 しかし、すでに抜剣モードになっているアティの耳には届かなかった。

「馬鹿ああっ!!」

 抜剣者《セイバー》の容赦ない一撃が獅子に下されたのは、言うまでもない。




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